運動療法学Ⅱではいろいろなことをいっぱい経験できます。
今回の講義では、AKA-H、ANT、SJFなど技術としては、多種多様なことをやりました。講義内容としては伸張運動です。関節可動域を増大することは臨床でも必要度が高いです。実際には他にももっといっぱい種類があります。一人のPTが全部を習得するのはたぶん無理なくらい数があります。その中の一部ですが、奈良リハでは経験することができます。今日の講義内容は次の通りです。
14:00 ~ オリエンテーション
【足関節】 背屈
14:20 ~ 【股関節】 伸展
14:35 ~ 【手関節】 背屈・掌屈
14:50 ~ 【頸 部】 屈曲
15:05 ~ 【休 憩】
15:15 ~ 【股関節】 SLR
自動抑制
Contract-relax
Hold-relax
Agonist contraction
他動構成運動-伸張あり
15:40 ~ 【膝関節】 伸展
他動構成運動-伸張あり
15:55 ~ 【手関節】 背屈
※ ANT 胸鎖関節
16:10 ~ 【休憩】
16:20 ~ 【股関節】 外転
※ ANT 仙腸関節
16:35 ~ 【肩関節】 屈曲
close-lengthening
16:50 ~ 【副運動】
肘関節側方動揺
17:05 ~ 【まとめ・後片付け】
17:10 ~ 終了予定
オリエンテーションでは本日の講義内容を説明しました。伸張運動の対象は何か、効率よく伸張するにはどうすればよいかなどを説明しました。その中でも一番大事なのは痛みを出さないということです。これは守れそうで守れないことです。うっかりということはよくあります。しかし、これは日本の風土としても痛みを受け入れることが昔からあり、もともとの地盤がありますので気をつけないといけない部分です。痛みを我慢してこそよくなると思われていることにあります。よくない風潮です。学生同士もつい甘えがあって、お互いに許してしまいます。嫌なことを言わないでおく、言われても受け流す…。曖昧にしておくことで深く受け止めないでおく。お互いの練習の場面ではよくあります。
説明が終わったので、さっそく伸張運動を開始です。まずは足関節背屈からです。これは臨床ではポピュラーです。よくされている技術です。踵を持って、前腕腹側で足底を押します。それにより背屈を起こし、下腿三頭筋を伸張します。これも動くように動かせばいいのですが、背屈を強く起こしたいがために足底を押しすぎて体全体が突き上げられるように動いたり、膝が曲がったりして違った運動が起きてしまうことがあります。効率よく伸張するためには、足関節に軸を想定し、その軸に対して回転運動を起こすように操作します。それでうまくいきます。
股関節伸展は側臥位で行います。膝関節の位置により二関節筋である大腿直筋の緊張が変化します。股関節を純粋に伸張しようとすると膝関節は伸展位にします。大腿直筋をより伸張したいときは膝関節屈曲位にします。これにより運動に対する抵抗感はだいぶ異なります。膝関節屈曲位で行う股関節伸展の伸張運動は腹臥位でやります。その方が骨盤を安定させることができます。大腿直筋の伸張は一般的にもよくされています。
手関節背屈・掌屈は手外筋を上手に伸張することが秘訣です。背屈では近位の関節から運動を起こします。手関節→MP関節→PIP関節→DIP関節の順です。実際には逆の手順で、つまり遠位を固定して近位部を動かすことが基本です。が、手関節背屈ではこの方がよいようです。掌屈では遠位から動かしておきます。つまり、DIP関節から屈曲させていきます。そして、指を巻き込むようにして徐々に全体を屈曲させていきます。掌屈の伸張運動はけっこうキツイです。手関節背面に痛みを伴うことが多いです。ゆっくりとやらないと急激に痛みが強くなります。学生はみんな元気なので、けっこう思いっきりやっています。どれだけの痛みに耐えられるかを勝負しているような感じです。若いことはすばらしいです。
次は頸部屈曲です。これは古典的な方法です。最近ではあまりやることはありません。ちょっとリスクが高いからです。頸部の動きはよほど気をつけていないとアブナイです。あまりお勧めはできません。これは、相手の頭側に立って、腕をクロスして手を相手の肩に当てます。クロスした部分を後頭部に当てて持ち上げるようにして頸部を伸張します。真っ直ぐにあげるわけではなく、どちらかに伸張を強くするために左右のどちらかをより高く上げます。上手にやれば、気持ちいいという感じが出せると思います。あくまでもゆっくりとやらないといけません。
これでいったん教員室に戻って休憩です。休憩中にはそこまでの講義内容について話をすることが多いです。みなさん、「勉強になります」と言ってくださいます。嬉しい言葉です。誰かを指導しようという意図はありません。学生に教育するということが目的です。しかし、私もそうですが、人に何かを伝えようとするとき自然と勉強します。自分が理解できていることしか伝えることができないからです。少しでも理解できている部分を大きくしたいと思うからです。
休憩が終わって講義再開です。次は自動抑制性伸張運動になります。これには、Contract-relax、Hold-relax、Agonist contractionなどがあります。伸張をより効率よくするために生理学的な原理原則を用いています。相反性神経支配と最大収縮後の最大弛緩です。これはデモでも分かりやすいものです。学生にしても変化が分かりやすいので取っつきやすいようでした。あちこちで一生懸命やっています。ワーワーキャーキャー言いながらやっています。賑やかなことです。感想メールでもhold-relaxが一番分かりやすかったとありました。私自身も学生の頃、実習でよく使ったいました。やっぱり変化が大きく、自分にも担当している患者さんにも分かりやすかったからだと思います。しかし、本当によく分かります。人間の体というものはいろいろな機構があります。こんな部分にも興味を持つ人もいてるでしょう。自動抑制についてはSLRでやりました。SLRはもう一つ新しい手技を使いました。それはAKA-Hの他動構成運動-伸張です。これはSLRをやりながら、大転子を骨運動に伴う関節包内運動を介助するように操作します。大転子が回転運動を起こすので、その接線方向になるように術者の母指で操作します。すると、痛みなくSLRの角度がドンドン上がっていきます。学生からは驚きの声が上がっています。体の柔らかい女の子では120°くらいまで角度が増していきました。聞いてみると痛みはないそうです。やっている方もどこらあたりで止めようかと迷いながらやっていました。手応えが頼りです。抵抗感がガクンと大きくなったら留め処です。あるいは膝が曲がってきます。それで分かります。
それから、次の部位に移りました。次は膝関節伸展です。この場合も他動構成運動-伸張を用います。今回の講義では軽度の屈曲拘縮があることが想定されています。だから、可動域の中でも最終伸展-20°くらいからの伸張です。被験者が背臥位で踵をつけたまま膝を少し浮かします。それから、大腿骨遠位部を上面から、下腿近位部を後面から手を当てます。この場合の動きは、脛骨が大腿骨に対して伸展に伴い前方に滑ることを他動的に動かします。それを下腿近位部の手で操作します。それに対してカウンターを大腿に当てている手で操作します。この時に、タイミングと量と方向を合わせるのが難しいです。
これでまた休憩です。10分ほどしたらまた教室に戻りました。次はANTを使った伸張運動です。手関節背屈をやりますが、細かい圧迫の仕方はここでは記述しませんが、この時に胸鎖関節を圧迫します。すると、手関節背屈で感じた痛み、あるいは伸張感が減弱、消失します。軟部組織の緊張も減弱するようです。その結果、伸張運動がさらに可能になります。これには学生がさらに驚いていました。
関節とは本当に不思議な器官です。もちろん、他の器官についてもいっぱい不思議なことはあるだろうと思います。私が接する機会が多いのでは運動器系になりますので、関節について理解を深めることは不可欠なことだと思います。
時間があれば仙腸関節にもANTをやって股関節外転の伸張運動をやりたかったのですが、時間の都合上割愛しました。
簡単に説明しておくと、ANTというのは関節受容器に働きかけ、その刺激で反射を活性化したり、抑制する方法と言い換えることができます。単純なそれだけの話ではありませんが、今回の講義内容ではそういうことだと言えます。胸鎖関節を圧迫して胸鎖関節の関節受容器を刺激します。強い刺激によりtypeⅢを興奮させることになります。その興奮は関節静的反射というものを抑制することになります。それにより軟部組織の緊張が軽減し組織の伸展性が増すというふうに説明されています。そして、そのtypeⅢの興奮により痛みに対しても抑制として働くとされています。その機序については不明ですが…。
最後はclose-lengtheningになります。これはSJFの技術の一つです。講義内容は昨年とはちょっと違っています。バージョンアップというか、新たな目線を持ち続けていきたいという思いです。close-lengtheningは接近法と呼ばれています。これは関節面を近づけるという意味です。そのことにより関節面の摩擦が小さくなり、伸張することなしに組織を延長することができるとされています。これまた不思議なものです。ついこの間、研修会で習った技術です。うまくいくかどうかは分かりませんでしたが、一か八かです。失敗しても自分の技術のせいですから。デモをやって何とか現象を出すことができたのでホッとしました。学生が練習している時も現象を再現できている人はいてました。これもまた不思議がっていました。私も説明はできません。しかし、現象は再現できます。
今日の講義ではtraditionalなものからAKA-H、ANT、SJFなどの新しい運動療法技術を経験してみました。一年生ですから、技術の習得を目標には置いていません。これをきっかけにPTになりたいとさらに思ってくれたらいいかなぁと願っています。そんな講義になっていればいいのですけど。治療するという言葉にふさわしいものを臨床に出てから選択することになるはずです。
最後に副運動をやりました。今日は肘関節の側方動揺です。完全伸展位ではしまりの位置になっているので動きませんが、少し屈曲位にすると側方に動揺するようになります。屈曲が大きすぎると肩関節での回旋運動しか起こらなくなります。ガクンガクンとした手応えがあればうまく動かせていると思います。治療的な意味はありません。できるかできないかだけです。
技術を習得するということは学校では難しいとは思います。習得するのはもっと基本的な運動についてです。しかし、いずれはこういう技術も特殊な印象はなくなっていくでしょう。学校でどれくらい教えるかは年々変えていく必要があると思います。
